蓋について 2018/10/19
瓶の蓋を見てみると、そういえば蓋の形は色々あるよなと思った。
瓶の蓋から弁当箱の蓋、ワインのコルクの栓など、形は様々だが、
大抵の目的は「内容物をこぼさないこと」だ。
そして、こぼさないという点で、瓶の蓋のような回して締めるタイプが
最も優れているように思える。
きちんと締めれば逆さにしても溢れることはない。
逆に、その点弁当箱の蓋はダメだ。脆弱性を孕んでいる。
学生時代、通学中に鞄の中で弁当箱がひっくり返り、漏れた黒豆の液で、
鞄の中が甘ったるい香りで充満した記憶がある。
しかも教科書はベトベトで黒ずんでしまった。
以来、鞄の中の劇物に怯えながら、憎しみを含みつつも、慎重、丁寧に
鞄を扱うようになった。
だがこれでは、まるで私の行動が弁当箱の蓋によって制限されているようで
腹立たしいではないか。
何故、弁当箱の蓋はそんな欠陥を孕んだ形態を頑なに維持しているのだろうか。
弁当箱メーカーへの不満を募らせていたところ、あることに気づいた。
「弁当箱の蓋によって我々の行動は制限されている」
液漏れの恐怖があるからこそ、か弱い小動物に触れるときのような、丁寧で慎重に
鞄を扱わざるを得ない。
だが、逆に液漏れの心配が無ければ鞄をブンブン振り回す輩がいる可能性も十分
にある。
そう考えると、我々の社会は弁当箱の蓋によって、ほんの少し、丁寧な、良い方向に
誘導されているような気がして来て、弁当箱の蓋よ、まぁ、今の形のままでも良いぞ、
と寛容な気持ちになった。