考察「サクラクエスト」が元気をくれた理由



PA Worksのお仕事シリーズ第3弾「サクラクエスト」が最終回を迎え、久々にアニメで泣かされました。
地味で派手ではないけど、色んなテーマが自然に絡み合って色々考えさせられたし、登場人物が本当に存在するんじゃないかと思える良い作品だったなと個人的には思います。
我々もいつまでも若者でバカ者でありたいものです。

久々に最終回で名残惜しさを感じたので、これは、なぜ感動したのか、なぜ元気をもらえたのか考える価値があるなと思いましたので、言語化を試みます。

■超ざっくりストーリー

晴れて就活浪人が決定した木春 由乃(こはる よしの)は、バイトで田舎の町一日国王の仕事を受けました。
いざ行ってみると、往年のアイドル「椿 由乃」と間違えられていたことが判明。しかも、一日の単発バイトだと思っていたら、契約期間は1年間でした。
そしてなんやかんやで国王として、4人の「大臣」とともに、1年間見知らぬ田舎の町で町おこしに奮闘することになります。

寂れた町と同じように、自信や情熱を失い、先の見えない主人公たちが、色々な失敗や困難を乗り越えて、町の伝統や魅力を再発見、再構築していくことで町が少しずつ魅力を取り戻していき、その過程で自分自身のルーツや情熱を見つけて魅力的な人に成長していくんですけど、もうね、最高。

では、なぜ感動したのか考えていきましょう。

■視聴者も一緒に悩む。


サクラクエストは作品の世界に感情移入させるのが上手かった。のだと思います。
なぜ、感情移入し易いのか。

①コメディと人情ばなし。
普段我々が他人と話をするときに、笑うと警戒心が和らぐことがあると思います。
アニメや映画も同様に、笑うことで警戒心が解け、作品を受け入れやすくなるのではないでしょうか。

サクラクエストはコメディタッチでドタバタと物語が進んでいき、突然のボケやユーモラスな掛け合いについ笑わされます
そうして、この作品に安心し、心を開いていると、ふっと優しいセリフやセンチメンタルな話が差し込まれてきて、まともにストレートパンチが直撃します。

これは、銀魂とかでもよくあると思うのですが、下ネタ全開のギャグでゲラゲラ笑って、銀魂を全面的に受け入れたところで、突然人情話が始まって号泣っていう、あのパターンと似ているなと思いました。

スペースダンディのアデリー回もこれか?
私はこの手のことに弱いみたいです。

②現実にもある問題。
物語の舞台の間野山市は典型的な「よくある田舎」で、商店街はシャッター通り、高齢化で老人が多い。
蕨矢集落という山の中にある集落に至っては、限界集落化してバスの廃線が決定したりしています。

田舎の高齢化や若者の都市部への流出の問題は現実に存在していて、テレビ等で耳にする機会も多いので、問題が想像しやすく、作品内で取り扱われたときに、自分自身の問題として考えさせられます。

また、主人公達が個人的に抱えている問題も、「家族の不和」や、「自分の代わりはいくらでもいる」とか「人と上手に関わることが出来ない」等、誰もが一度は直面するような悩みで、想像し易いものです。

主人公達の抱える問題や悩みが想像しやすい分、主人公達と一緒に「さて、どうしよう?」と悩んでいる自分がいました。
一緒に悩んで、共に答えを見つけていくプロセスや、やっと答えを見つけた時に、彼女たちと一緒に喜びを感じていました。


③仲間
我々も仲の良い友人は、長い付き合いの中でその人を徐々に知って、より仲良くなるということがあると思います。
サクラクエストでも、初めは、登場人物たちは嘘をついたり、冷たい態度をとったりすることがあります。
それでも一緒に長い時間を過ごし、協力していくことで、お互いを理解し、強い絆で結ばれていきます。

登場人物はみんな互いに思いやりや、暖かい気持ちを持っていて、大切な仲間のために一生懸命です。
一緒に悩みを共有し、共に解決策を模索し、悩みを抱えている張本人が、仲間たちの協力のもと問題を乗り越えることで絆が深くなっていきます。

視聴者である自分も、そのキャラクターの新しい一面を徐々に知っていき、さらにどんどん立派になっていく様子を見ることで、加速度的に魅力的に感じて行きます。

④人物描写
ここまでくると、登場人物達を実在すると錯覚し始めている自分がいたのですが、
さらにそれを後押ししていたのが、人物描写のこだわりです。

普段良く見るアニメは、皆いつも同じ服を着ていて、それがそのキャラクターの「記号」となっていますよね。
ところが、サクラクエストでは、、登場人物が着る服が毎回違っていたり、座りかたや、振る舞いなど、でそのキャラクターを描いています。

また、それぞれの家族関係や過去の経験などその人物の周辺がさり気なく描かれることで、その人の人となりをより自然なものにしています。

私は主人公のドヤ顔がすごく可愛いくて好きです。
尊い...
その可愛いらしさが狙われた可愛いさではなくて、「あぁこの人なら、こういう顔するよね」っていう、普段自分が友人や家族に感じるのと変わらないリアルな好感であると思うんです。

この人物描写のこだわりも、キャラクターをリアルな人として感じさせるポイントになっているのではないでしょうか。

公式サイトのキャラクター紹介を見ると「好きな酒」というのが紹介されてたりしましたw

少し話がそれますが、この作品では頻繁に宴会で酒を飲んでいます。
2話に1回くらい酒飲んでるんですけど、超楽しそうなんですよね。
あれみると、友達と酒を飲みに行きたくなります。

⑤確実に待っている別れの時
国王の任期は契機が1年間です。
終わりが確実にあり、作品内で季節が移ろう度に、確実に終わりに向かって進んでいるのを次第に感じ始めます。
そして、登場人物達も、「終わり」を感じるセリフをぼそっと言ったりして、心を開いてしまった私も、終わりが近づいてくる切なさ、名残惜しさを感じてしまいました。
けいおん!の卒業がちらついたあたりのあの感情です。
「もうすぐ卒業だね」あぁあああああ!俺もあずにゃんと同じ気持ちだよぉぉぉぉっていうアレ。

キモいな。

登場人物と、自分の感情がリンクすることで、一層センチメンタルを刺激されわけです。
これがうまくできる作品はあまり多くないと思います。



⑥心地の良いアニメ感
今まで述べてきたことを、湿っぽくなく、さっぱり、地味に描いているところが最高に憎い仕事してくれやがるなぁ!と思うのです。

わざとらしくなく、自然であるということは、地味だけど、現実感の我々の生活も地味です。
地味故に、どうせファンタジーでしょっていう、意識をあまり抱かずに、自然と作品の世界に入り込んでいました。

と、言いつつ、アニメならではの「嘘」感の使い方がとてもうまいので、アニメらしさを失っていません。

ドクのパワードスーツとか。
サンダルさんの存在そのものとか。
ドリフトしても法定速度遵守とか。

何故かサンダルさんのご都合主義は許せる不思議。
上記の様な「嘘」の使い方が凄く上手で、心地いいんですよね。

「嘘」や毎回の「お約束」が、この作品の良いアクセントになっていると思います。
しおりの「だんないよ」とか、正直さんの「正直」が聞けた時の、水戸黄門を観ているような安心感。

よ!待ってました!っていうお約束って凄く好きです。

⑦最後に
色々書きたいこと書いてたので、考察がひっちゃかめっちゃかですがよ、結論としては、少しずつ「大人」になった主人公達を見て、こんなに立派になっちゃって、と親のような気持ちになり、また、一緒に悩みを乗り越え成長する疑似体験をしたことがこの作品が私たちに元気を与えてくれた理由だと考えます。

あと、老人や大人たちがカッコイイ大人ってのがまた良いんすよ。

最終話のラストシーンで号泣したわけですが、
徐々に認め合い、団結する町の住人達と主人公たちの関係性が最高の形で描かれていましたね。

サクラクエストは「桜の苗を植える話だったんだなぁ」という意見がネットにありました。

誰かの犠牲のうえに立つ「開発」ではなく、その町の人達がその町に住む誇りを思いだすことが町起こしだと由乃は考え、行動しました。

そして、主人公たちが町の魅力を再発見し、たくさんの「桜の苗」を植えました。
きっと町の人達がその「苗」を大きくしていくことでしょう。

由乃に元気をもらった町のみんなが送り出してくれるシーンからの、会長の横断幕の流れは卑怯ですよ。

集大成!カタルシス!最高すぎる!んなもん泣くに決まってるわ!
「木  春由乃ぉぉぉ!ここはお前の町じゃぁぁあ!いつでも帰ってこぉぉぉい!!」
「木と春が離れすぎです!」っていう最後の掛け合いが最高に素敵でした。

町はその町の住人達によって作られる。

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